日頃から銭田治療院スタッフブログをご覧頂きありがとうございます。
今回は、膝の疾患についてまとめましたのでよろしくお願いします。

テーマ「膝の疾患 原因から治療まで」

・膝の構造

・膝の症状について

・治療方法について

・セルフケアー

膝の症状でお悩みの方は、日本国内における患者数が700万人を超えており、自覚症状の有無に関わらず、40歳以上の方の半数以上が罹患しているというデータもあるほど、多くみられる疾患です。
病状が進行していくと、歩行困難や、最悪の場合は寝たきりになってしまう事もありますので、介護予防・健康寿命の延伸という観点からも見過ごせない疾患の一つになっています。
そこで、今回は膝の疾患で特に多い変形性膝関節症・半月板損傷について、当院での治療やセルフケアについてまとめました。

〔弊社社長コラムより引用〕
「膝疾患に対する保存療法(リハビリテーション)について」

“膝疾患に対する保存療法を行なう際、疼痛部位(圧痛点)を解剖学的に明確にすること、疼痛の原因がoveruse(使い過ぎ)か、disuse(廃用性)か、maluse(誤使用)によるものかに分類して治療プログラムを組み立てることがポイントである。疼痛部位を解剖学的に明確にすることが必要であり、そのための触診技術は、該当組織の機能解剖学との関連の中で運動療法を考えることが大切である。”

このように書かれているように、膝疾患の治療の際は解剖学的知識が重要となります。
まず初めに、膝周囲の解剖学について解説致します。

○膝の構造

膝関節は人体で最も大きな関節です。膝関節は、骨、軟骨、靱帯、筋肉、腱などから構成されており、正常な膝関節はスムーズに動き、歩行や方向転換、その他の多くの動作、痛みを感じることなく行うことができます。
膝関節は、3つの骨からできています。脛骨の上に大腿骨が乗り、更に大腿骨の前面には膝蓋骨があります。膝関節はいわゆる蝶番関節で、大腿骨と脛骨の間で曲げ伸ばしが可能です。膝蓋骨は、太もも前面の筋肉と脛骨とをつなぐ腱の間にあり、膝を伸ばす際に筋肉の収縮をうまく脛骨に伝えるための滑車の役割を果たしています。

〔画像引用〕
坂井建雄、松浦譲兒(監訳)「プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系」    医学書院 東京 2008
P393膝関節の靭帯 P443大腿、骨盤、殿部の筋 参照

〔画像引用〕
白石吉彦 白石裕子 皆川洋至 小林只志(編集) THE 整形内科 南山堂 2016年
P141 鍼灸療法 参照

膝関節にはさまざまな筋肉・腱・靭帯が付いており、それらによって安定性を保ったまま曲げ伸ばしをすることができます。また、膝周囲には複数の重要な経穴が集まっています。

特に、太もも前面の筋肉である大腿四頭筋は膝関節の曲げ伸ばしをする際、体重を支える重要な役割を担っています。
膝を曲げようとする際には、太ももの後ろにあるハムストリングスと呼ばれる筋肉が収縮し、逆に大腿四頭筋が緩んで、大腿骨が脛骨の上を後方にすべりながら転がることで膝が曲がります。

関節の内面は滑らかな軟骨で覆われ、その間には半月板と呼ばれる組織が介在しています。更に関節部分は関節包で包まれており、その内側の滑膜(かつまく)から関節液が分泌され、潤滑機能を果たしています。これら軟骨、半月板、そして関節液が働くことによって、膝関節は滑らかに動きます。その曲がる角度は正座をする時で150度前後、しゃがんだ時で約120度、そして歩行時では60度前後です。

膝関節の機能を正常に維持するためには、関節に負担をかけすぎないようにしながらも周りの筋肉を常に鍛えておくことが非常に大切です。
大腿骨の正面から下肢全体を見た場合、股関節(大腿骨頭)の中心と膝関節の中心を結ぶ線(大腿骨機能軸)は大腿骨の長軸と約7°の角度をなしています。また、脛骨の長軸に垂直な面と脛骨関節面のなす角度は約3度の外側あがりになっています。全体として大腿骨の長軸と脛骨の長軸のなす角度 (femoro-tibial angle :FTA)は、正常では約176°です。

FTA図

〔画像引用〕
愛媛大学医学部付属病院 人工関節センターサイト

○変形性膝関節症とは?

【病態および原因】
・膝関節の関節軟骨が摩擦・変形・消失し、関節の変形や関節炎を引き起こすものである。
・大腿脛骨関節内側型、大腿脛骨関節外側型、膝蓋大腿関節型があり、内側型の頻度が多いので、その説明をしていく。
・膝の酷使や加齢によるものが90%を占め、その他膝関節の既往(側副靭帯・十字靭帯・半月板の損傷など)が原因のものも存在する。
・男性に比べ女性は約4倍の罹患率がある。特に肥満した40代女性に多く発症するものである。
・女性に多い理由として体質やエストロゲン(更年期)、男性に比べて膝関節が小さいこと、ハイヒール使用による膝関節の負荷が考えられている。

【症状】
・膝関節の内側を押すと痛い。
・膝に水が溜まる。(関節水腫)
・運動開始の時に痛みが出る。
・何もしていなくても痛みがある。
・骨変形が進行すると膝関節内反(O脚)となる。
・膝が伸びきらない

「初期には動き始めの痛みや階段の昇り降りの際の痛みが出現する。進行につれ歩行時痛や安静時痛が出現する。関節が腫脹し、「水が溜まった状態」になることもある。末期になると安静時でも常に痛み、膝が変形し、真っ直ぐ立つことも不可能となり、歩行困難となる。」

【予後】
・休めば治るものではない。
・初期の段階では、膝にかかる負担を減らす生活指導、消炎鎮痛薬の投与という薬物治療が行われる。また、膝を伸ばす筋肉である大腿四頭筋の筋力強化により、膝関節の負担を軽減する運動療法も合わせて行われる。
・内反変形(O脚)が強い場合は、足の外側を高くする外側楔状足底板で荷重軸を矯正する装具療法を行う。更に、内反変形が著しい場合は人工関節置換術が行われる。人工関節の耐用年数は、約15年~20年以上と言われている。

○半月板損傷とは?

【原因】
膝関節屈曲位での、体重負荷し回旋力が加わることで受傷。
例えば、スポーツなどの怪我(ひねり、衝撃)からや、
加齢に伴って軽度の外傷による半月板の損傷が生じる。

【症状】
外傷により、前十字靭帯の合併を引き起こすことがある。
初期:疼痛、腫脹、ROM制限、歩行障害。
後期:ひっかかり感、かんとん症状、クッリク音が出現。
他にも関節液がたまることや、急に歩けなくなる状態(ロッキング)という状態になる。

【保存方法】
リハビリテーションや抗炎症薬の処方をすることが多いが、
リハビリや薬で改善しない場合は、手術を行なう。
損傷部分を縫い合わせる縫合術、損傷した部分を切り取る切除術があるが、
通常は関節鏡を使った鏡視手術を行なう。

〔引用〕
・細田田穂(監修)理学療法評価学テキスト 改訂第2版 南光堂 2017年
日本整形外科学会 サイト

当院での症例紹介

理学療法士による運動療法と鍼灸師による鍼治療が、非常に有効であった、半月板損傷の症例(2018.6月受傷)を紹介します。

歩行時に、右膝内側に急に何かが挟まったような違和感と徐々に腫れと痛みが出現し、数時間後に歩行困難の状態になった症例です。

各種検査、MRI、レントゲンによる診断の結果、膝内側の関節の隙間が狭くなり、内側半月板がおそらく切れて反転して挟み込まれている状態でした。

整形外科からは、このままの状態が続けば、内視鏡で内側半月板を取り除くか、脛骨の骨切術と言われました。装具と痛み止めを処方され、しばらくは、保存療法で様子を見ることになり、当院で治療を行いました。

当院では、エコーガイド下で鍼、徒手によるFasciaリリース、運動療法を行います。

受傷後より1週間継続して、治療を行いました。
3日目に半月板周囲のFasciaをリリース、その後に関節の動きを誘導した際に、コリっと音がした。後、荷重時の痛みと膝の伸展が改善しました。

エコーガイド下にて、鍼、運動療法、どちらの治療においても、半月板の周囲のむくみが軽減し、脱出した半月板が関節内に入る様子が確認できました。
そして、鍼だけでなく、運動療法も行った際に最も痛みが軽減しました。

かばう動作により、隣接する関節(膝の場合は、股関節、足関節)や腰や反対側の足など、全身の痛みも出現しますが、その治療も行うことでさらに膝の痛みは軽減し、立ち上がりや歩行の動作がスムーズになります。

受傷後、2ヶ月たち、週1回の治療を継続しています。しゃがむ動作や軽く走ることも可能となりました。
生活における動作は、ほぼ損傷前の状態に戻っています。

Fasciaとは、皮膚、筋、脂肪組織、血管、神経の周囲の線維性結合組織の線維成分のことをいいます。
Fasciaが硬くなると、隣接する組織の滑走性が低下します。
そのため、皮膚、筋、血管、神経、脂肪周囲のFascia(筋膜を含む)の柔軟性を改善することで、関節可動域、痛み、筋力、血流、が改善します。

①エコーでは、施術前後で、筋のボリュームや、隣り合う筋の滑走性が改善し、血流が改善する(血管径が大きくなる)ことも確認できます。

②理学療法評価により、痛みやその原因を明らかにし、触診、徒手療法、運動療法、においても多くの症状の改善がみられます。

③鍼治療は、徒手では届きにくい深層まで直接届くため、広範囲に圧迫を加えることによる痛みや負担を少なくすることが可能です。痛みや組織の柔軟性の改善にも、即効性、効果の持続性も高い傾向があります。

運動療法も鍼も併用することにより、保存療法の効果を最大限に発揮してくれるものだと思います。

その後、生活に合わせて継続した治療を、または、セルフケアを行うことで、再発を予防することも可能となります。

保存療法により、患部以外の痛みを抱える方、また、患部の痛みを軽減したい方もぜひ一度ご相談ください。

※保存療法とセルフケアには、「ソマセプトミオ」という刺さない鍼もございます。
テープで貼るタイプなので、患者様にも安心して使っていただけます。
使用方法は、当院治療スタッフが症状に合わせて丁寧にお伝えいたします。

〔銭田治療院  STAFF  BLOGより引用〕
銭田治療院  STAFF  BLOG「理学療法と鍼治療」

○変形膝関節症、半月板損傷に対する鍼灸

【治療】
鍼灸治療は、膝関節周囲のFascia痛みを取り除くことがまず第一の目的となります。加齢や外傷による変形や関節の機能低下により、その付近の軟部組織に負荷がかかり、それが脳に伝わり膝の痛みを認知します。

この情報は、運動神経を興奮させ膝関節周囲の筋肉や血管が緊張し、血液循環が悪くなり膝関節の痛みとしてあらわれるのです。また膝関節の変形によるメカニカルな負担は膝関節周囲の筋へ異常なストレスとして痛みや違和感を伴うわけです。このような痛みに関しては、鍼灸治療、特に鍼治療が効果的であります。※関節の変形、半月板損傷自体を治癒させる力は鍼灸治療はありません。

主に非薬物療法と薬物療法があります。非薬物療法としては、減量と運動療法が推奨されています。減量は20週で体重の5%以上を減らすことが出来た場合に、症状の改善に繋がりやすいと報告されています。また、腸脛靭帯炎、鵞足炎、膝蓋腱炎などの合併も多く、両者の治療が必要になることも少なくありません。

【運動療法】

運動療法として指導しやすいのは大腿四頭筋の筋力訓練です。仰臥位で両下肢を伸ばした姿勢で、膝裏に丸めたタオルを置き、膝がほんの少し屈曲した状態とします。手を使わずに膝を床に押し付けてタオルを強くつぶすようにすると、大腿前面の筋が固く緊張するのが分かります。力いっぱいタオルをつぶしたまま、息こらえを予防するため”声を出して”10秒数えるように指導します。

〔弊社社長コラムより引用〕
「膝疾患に対する保存療法(リハビリテーション)について」

○膝の痛みによるセルフケア方法

膝関節痛をおこすと大腿部の前面の大腿四頭筋を中心とした筋の衰えが著明になり膝関節を支持する働きが低下をきたします。このことは治療においても重要なポイントとなります。膝関節の運動療法にはパテラセッティング訓練と下肢伸展挙上訓練が代表的なものです。

パテラセッティング訓練
あおむけに寝て、膝をまっすぐに伸ばし、膝の後面を床に押し付けるように力を入れ同時にふとももの筋肉に緊張を加えます。力を入れたままゆっくり5つ数えます。その後、力を抜くこれを10回繰り返します。

下肢伸展挙上訓練
あおむけに寝て膝を伸ばしたまま約10°下肢を上げます。(足先がみえる程度)上げたままゆっくり5つ数えおろします。これを10回繰り返します。痛みが軽減したあとや予防として行うのが良いかもしれませんね!

セルフケアの方法として、膝蓋腱の両側から膝蓋下脂肪体を指でつまんでマッサージをするようアドバイスをすることが多いです。また、エコーで深膝蓋下滑液胞(膝蓋腱の付着部と膝蓋下脂肪体との境目)の癒着を観察し、癒着が確認できれば積極的に局所治療による剥離操作を実施します。
変形性膝関節症では、グレード3以下の症例に運動療法の適応があります。膝関節屈曲拘縮の改善に伴うligamentous stability(靭帯による安定化)と内側広筋・外側広筋を狙った筋力訓練がきわめて重要となります。
変形性膝関節症患者に意外と多いのが鵞足部の疼痛であり、とくに薄筋腱に対するストレッチと、局所治療による鵞足包周辺と腱との癒着改善は、疼痛の緩和に非常に有用です。関節に負担のかからない生活、入浴後の膝伸展運動の継続や、膝蓋骨周囲の軟部組織の柔軟性改善を目的とするマッサージなどを、セルフケアとしてアドバイスすることがポイントです。

〔文献引用〕
白石吉彦 白石裕子 皆川洋至 小林只志(編集) THE 整形内科 南山堂 2016年   P.250参照