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脊椎圧迫骨折受傷後のクリティカルパスを作成するための退院時アウトカム | 銭田良博ブログ

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脊椎圧迫骨折受傷後のクリティカルパスを作成するための退院時アウトカムの検討

【はじめに】

クリティカルパスを作成するためには、まず退院時アウトカム(在院日数、退院基準)の設定を行うことが重要である。今回、転倒や骨粗鬆症による骨折して重要視されている、脊椎圧迫骨折に対するクリティカルパスを作成する目的で、過去のリハカルテからの症例分析により退院時アウトカムの検討を試みた。

【対象と方法】

対象は、平成12年4月から平成17年9,月現在までの、脊椎圧迫骨折により入院しリハビリテーションを行った方合計28名(男性7名、女性21名、平均年齢79.54歳)とした。対象者の入院時及び退院時の障害高齢者日常生活寝たきり度、認知症高齢者自立度、起居移動動作レベルをリハカルテよりチェックし、当院での退院時アウトカムの設定について検討した。

【結果】

表1は、対象者を入院時の障害高齢者日常生活寝たきり度(以下入院時寝たきり度とする)により振り分け、それぞれの退院時の屋内自立歩行獲得者、在宅復帰者、平均在院日数を算出したものである。

表1 入院時寝たきり度別の屋内自立歩行獲得者・在宅復帰者・平均在院日数

入院時寝たきり度 A1 A2 B1 B2 C1 C2
個数(名) 7 4 2 4 9 2
屋内自立歩行獲得者 7 4 1 3 7 1
在宅復帰者(名) 7 4 1 3 6 2
平均在院日数(日) 78 79 78 202 104 48

 

表2 直接入院と急性期からの紹介入院別による受傷日からの開始日数と在宅復帰者数

自宅より直接入院 急性期病院からの
紹介による入院
個数(名) 9 19
受傷日からのex.開始日数 3.89 30.53
在宅復帰者数(名) 8 15

 

入院時寝たきり度がA2までは、屋内自立歩行を全員が獲得していた。また、A2までは全員が自宅に退院していた。さらに、A1・A2については病前のADLレベルまで回復していた。B1以下のランクでは、屋内自立歩行を獲得できなかったケースは5名であった。続いて、入院時寝たきり度がC2で、屋内自立歩行が獲得できなかったが在宅復帰が可能となったケースは1名であった。平均在院日数については、入院時寝たきり直別に算出してみたがばらつきがみられた。

今回のケース28名のうち、自宅より直接入院したケースは9名、急性期病院からの紹介による入院は19名であった。また、それぞれの起居移動動作ex.を受傷日より開始した日数の平均は、直接入院は3.89日、紹介による入院は30.53日であった。在宅復帰者は、直接入院は8名、紹介による入院は19名であった。当院に直接入院して在宅復帰できなかったケースは、Caの末期であった。

在院日数が100日以上となるケースについて、在院日数が延びる原因をカルテより分析した。その結果、起居移動動作時の痺痛が著明であること、痺痛も影響してリハ及び病棟ADLに対する意欲が低下していること、認知症であることが大きな理由として挙げられた。これらのケースは、在院日数が延びるだけでなく、在宅復帰も困難となっていた。

【考察】

脊椎圧迫骨折は、以前は受傷後3から4週間はコルセットを着用しベッド上で安静加療してから、理学療法を開始するのが一般的であったが、最近の文献では、受傷後硬性コルセットを作成したのちいかに早く起居移動動作ex.を開始するかが、早期歩行獲得のポイントとなると言われている。しかし、外傷部位の痺痛も動作時に伴うことから、外傷部位周囲の軟部組織に対する痺痛除去のための理学療法を平行して行うことが必要であるものと考える。入院前のADLが獲得できているかどうかと、入院前ADLが獲得できなかった場合については、入院前ADLレベルからの予後予測と、退院後必要とされているADLレベルの把握を的確に行えるかが必要であることが考えられた。特に、急性期病院からの紹介による入院については、紹介先からのリハサマリーと地域連携パスによる情報提供が重要になるものと考えられた。また、紹介先からの情報の有無に関わらず、入院後1ヶ月以内に退院前訪問を実施し、生活環境の評価を行うことが、入院前のADLレベルが獲得できなかった場合の具体的対策となることが考えられた。

在院日数の設定の際、野村1)はバリアンスの原因となる理由として、痺痛の有無、障害受容の把握、意欲の有無、活動性の評価、病棟におけるケア内容、認知症の有無などを挙げている。理学療法の適応となる二三の原因は、コルセット固定による骨折部位周囲の筋萎縮と、外傷による骨折部位周囲の軟部組織の痙痛が考えられる。従って、受傷後理学療法は早期からの全身状態に合わせた立位・歩行ex.の実施と、安静肢位での骨折部位周囲の軟部組織に対するmanual therapyを行うことが必要であると考える。また、意欲の低下や認知症に対しては、早期より作業療法を行うことが、在院日数の短縮につながるものと考える。

ここで、入院時寝たきり度C2で屋内自立歩行が獲得できなくても、在宅復帰可能となったケースについてのポイントを考察する。病前は独歩で移動し屋内ADLが自立していたが、受傷時救急車にて急性期病院に入院し安静加療後、リハ目的で当院に転院した。当院に転院したその日より起居移動動動作ex.を開始したが、受傷後50日目であった。当院では、PTが起居移動動作ex.と疼痛部位に対するmanual therapyを中心に行い、OTはADL及びAPDL ex.、意欲の向上を目的とした精神面に対する働きかけを行った。転院日より1ヶ月以内に退院前訪問を実施し、病前及び退院時必要とされているADLレベルの確認と、本人周囲の主介護者となる家族を中心にした介護力の確認、退院時の住宅改修及び福祉用具導入の必要性を確認し、退院時歩行が獲得できなくても在宅復帰が可能である環境が整備できるかを確認した。同時に、現在行っているPT及びOT ex.が適切であるかも確認した。以上のように生活環境の評価と環境整備を適切に行い、入院直後よりその評価内容を反映しながら在宅復帰を目的とした理学療法と作業療法を行うことで、結果として在宅復帰が可能となったことが考えられた。

【まとめ】

退院時アウトカムを設定するためには、急性期病院からの情報提供または退院前訪問により、受傷後起居移動動作ex.の開始日や、病前と退院時必要とされるADLレベルを把握することが重要であると考えられた。在院日数の短縮を図るためには、痺痛・意欲・認知症に対するPT及びOTの早;期からの対応が必要であると考えられた。今後は、症例数を増やすことと、脊椎圧迫骨折の受傷レベルや脊柱アライメントの影響についても加えて検討していく必要があるものと考えた。

 

【参考文献】

1)野村一俊:大腿骨頚部骨折に対するクリティカルパスと医療連携 91 CLITICIAN O2 NO.511 全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会:回復期リハビリテーション病棟調査報告書,2001.

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